授業報告(1月)

こんにちは。ガリレオサイエンス教室の三宅です。

月一ブログ、発信いたします。

今回は、ガリレオ(小2~小3)クラス、テーマは「キミも名探偵!」です。

「科学捜査へのご協力のお願い」というお便りが届きました。お子さんは探偵になり、事件の解決のため実験していきます。

まずは、犯行につかわれた薬品の登場です。
名前のわからない、無色透明の水溶液が4つ。この水溶液の正体を特定していきます。

どうやって水溶液を調べましょうか。そこから考えます。
「こうしたらよいのでは? と思うことはある?」と問いかけます。

言われたことを言われたとおりにすることも大切ですが、そもそもどうやるかを考えられることも、大切です。

ここで大事にしていることは、どんな意見であっても否定しないことです。
それは無理だろう、ダメだろう、というものでもとりあえず出してもらいます。思考の制限をしません。たくさんの方法があることを学びます。馬鹿にされない雰囲気の中で発言することの安心感も大切にしますので、自分の意見を言っても大丈夫な場であることを感じます。何も否定されない、認めてもらえる、聞いてもらえる、そういう場を何回も経験することで、自分の意見を言えるようになります。ので、どんな意見も大切にします。
「なめてみる! ……?」に対して、「なるほど、なめてみるね。たしかに。」「指を入れてみる」に対して、「指を入れてみる。なるほどー。」と。

「なめてみる」という発言に「そんなん、あぶないやん!!」と反応するお子さんもいます。でも、それで先生が「あぶないからダメだね。」という反応をすると、どうなるでしょう。「なめてみる」という発言をしたお子さんの気持ちは?
まちがったことを言った。はずかしい。恥をかいた。
今度から意見は言わないでおこう。まちがってるかもしれないし。
自分が思っていることがあっても、言わない方が安全だ。意見は言わない。
こうして意見を言わない子が生まれます。

こちらが「あぶないかもだけど、1つの方法だよね。危険だからしないとかは、その次の話だから。まずはいろいろな方法を挙げてみる。そのうえで、どうするかを決めたらいいので、最初から制限はしません。なるほど、なめてみるね。たしかに。」とまずは認める反応すると、「そっか、それも方法かー」と教室全体の雰囲気がなっていきます。そのあとは、いろいろと考え出します。「じゃあ、においかぐ? ……とか?」「顕微鏡で見るのは……?」「リトマス試験紙使う!?」など。

いろんな考えが出たり、出なかったりします。考えとして出なくても、「どうやったらいいかな?」に自分なりに考えようとしたこと、それ自体が大切です。


たとえばにおいで判断する、のであれば、特徴的な薬品のにおいを紹介していきます。
お子さんに前に来てもらって、実際にかいでもらいます。(うすめてあり、安全なものです。)体が動くことで緊張もやわらぎ、ものごとを近くで感じることで自分ごととなります。
アンモニア水のにおいには、みんないい反応です。心が動く瞬間です。いろんな感情を味わってもらっています。そのときもどんな感情も受け入れます。

 
液性を調べるときは、リトマス試験紙を使います。色が変わるのは、何回見ても感動します。

 
においと液性だけでも、4種類の水溶液が何なのかを予想するお子さんも出てきます。何も言わなくても、自ら楽しんで「これじゃない?」「ぜったい、これ!」など、班のみんなで予想しはじめます。目の前のことを自分ごととしてとらえて、興味深く、関心ごととなっていることを感じます。

 
 
火であぶって蒸発させ、残るものがないかどうか調べます。
これもお子さん自身でやります。マッチの練習、アルコールランプの練習をして、実際の実験に進みます。マッチで火がつけられる、アルコールランプを扱えるというのは、お子さんにとってとても自信になることです。つけられなくても、火と向き合えた自分をよしと思います。こわい、できないという気持ちも受けとめます。(そうやって接していると、1回や2回の授業では無理でも、何か月後かに必ずつけられるようになります。)
蒸発させると、白い粉が残ったり、何も残らなかったり。
黒くこげて、甘い匂いがしたり。……ってことはこれ砂糖じゃない? とか。砂糖あるの? ダミーじゃない? とか。

 
 
金属を入れたときの変化も見ます。
水溶液を試験管に取って、鉄や、アルミニウムを入れます。
手袋をして、試験管に注ぐ。取り違いがおこらないように番号で管理する。スチールウールをちぎって丸める。アルミの板をはさみで小さく切る。そんな、特別ではないけど、特別なことをやっていきます。
水溶液によっては、金属がとけて泡が出てきます。じっとみつめます。お子さんの中で不思議がいっぱい広がります。

金属に反応する水溶液は、これかこれ。
これまでの実験結果から考えて、この薬品はこれ! 当てていきます。

 
 
 
授業の後半は、犯人からの挑戦に取り組みます。なぜか犯人の使ったコップの入った箱があり、その鍵を開けるために課題をクリアします。

 
最後に、コップについている指紋調べをします。
蛍光の粉末をそっとコップにつけ、指の油(指紋)にくっついて残った跡で、犯人を特定します。

においをかいだり。
リトマス紙をつけたり。
アルミを切って入れたり。
粉をそっとつけたり。

やっていることは、誰でもできることです。

実は、警察の捜査機関などでも、正体不明のものを調べるときは同じようなことをやっています。
光を当てたらこのように反射した。液性はこうだった。○○は○○だった。だからこの薬品は○○である。機械に入れたら自動で出てくるんじゃないのと言われることもありますが、それも人間がやることを代行しているにすぎません。

もっと言えば研究も、もの作りも、会社も、政治も、すべてなにもかも、普通の人が、普通にできることをやっています。超能力を持った人や、人外の生命体がやっているわけではありません。人間が、人間にできることを、やる。その積み重ねでできています。

自分の手で、あたりまえにできることをやった。あたりまえに結果がでた。
正体不明の薬品の、正体がわかった。
指紋を採取し、同定できた。

そういう経験をたくさんすることで、この世界が、特別なものでできているわけではないと分かってきます。
スーパーで売っているものも、作ろうと思えば自分で作れるものである。
テレビも、学校も、作ろうと思えば作れる。超能力が無いとダメなわけではなく、自分の立っている場所と地続きであることが分かってきます。知識や人の助けが必要かもしれない。でも、自分にも、できるものなんだと心が感じるようになります。

世界は自分には変えられないものではなくて、自分の行動で変えられるものだと信じられるようになります。

もちろん、今回のこの1回の授業でそうなるわけではありません。
何度も何度も体験することにより、自然とそういう心持ちになっていきます。

自分で意識してそうなるのではなく、自然とそうなっていきます。

人は、環境に左右される生き物です。

お子さんが、人生を自分らしく豊かに生きる力を育めるよう、環境を作っていきます。
今後ともよろしくお願いいたします。

三宅恵里香