授業報告(2023年5月)

こんにちは。ガリレオサイエンス教室の三宅です。

月一ブログ、発信いたします。【6月19日発信】

今回は、アインシュタイン(小5)クラス、テーマは「気体発生」です。

理科実験の定番、学校や塾で必ず勉強するところです。

具体的には、学校では、
大理石と塩酸で二酸化炭素が発生する。
二酸化炭素の性質は、
・色もにおいもない気体である
・火を消す働きがある(火が燃えられない気体である)
・空気よりも重い
・石灰水を白く濁らせる
・水にとける
・水にとけると酸性の水溶液になる
など
と習います。

昔の人がたくさんの実験をしてわかったことを、知識として習います。もうすでに実際にやってわかっていることを知識として得ることはとても大事です。知識として得ることで、その分の時間を省略でき、まだまだわかっていないことの研究をすすめることができます。

しかし、今回は、「大理石と塩酸で二酸化炭素が発生する。その二酸化炭素の性質を調べてみよう」ということではありません。
「物質に物質をまぜると、なにやら気体が発生した。この気体の性質を調べてみよう」です。

授業自体も「今日は、気体発生というテーマです。ものをまぜあわせたときに、なにやら気体が発生することがあります。今日は、気体を発生させて、その性質を調べていきたいと思います。」からはじまります。

 
「前に来てください。」と、まず、お子さんを前に集めます。このとき、椅子に座らせたまま見せるのではなく、前に来て近くで見せることを大事にしています。そのことで、遠い存在のものごとが近い存在になり、これからやることへの興味関心がわき、自分ごととしてとらえていきます。

大理石と塩酸の紹介をして、大理石に塩酸をかけてみます。目の前でぶくぶくしはじめます。お子さんは、なにやら気体が発生していることを感じます。
ぶくぶく泡が出ていることを自分で目の当たりにすることで、これからこの泡を集めて、その泡の性質を調べるのかーと実感していきます。
「はやくやりたい!」と感じるだけではなく「なんだか大変そう……」という感情も含めて自分ごととなる瞬間です。

 
 
 
気体の集め方の説明、諸注意のあと、実際に気体を集めたり、その気体の性質を調べたりしていきました。

 
 
 
集めた気体の中にろうそくの火を入れてみたり、石灰水を通してみたり、空気より重いかを調べたりしました。
ろうそくの火を入れてみると、ある気体では入れた瞬間に消えること、またある気体でははげしく燃えたりすること、どちらも楽しんでいるようでした。

 
石灰水を入れてみると、ある気体では白く濁り、ある気体では透明なままであることも調べていきました。

 
実験の結果、ものがはげしく燃えたり、水に入れてもあまり溶けなかったり、空気よりも重いなどの性質があることがわかりました。
そして、その気体には今では「二酸化炭素」とか「酸素」という名前がつけられていることを知りました。

今回のねらいは、
物質をまぜあわせたときになにやら気体が発生することがある。その気体の性質を調べたら、空気と違う性質をもっていることがわかった。この性質を持つ気体には、酸素、この性質を持つ気体には二酸化炭素という名前をつけただけのことだと知ることで、世界を広くとらえられるようになることです。

「酸素とは、これこれこういうものである」のように考えてしまうと、その他の性質がある可能性を考える余地をなくしてしまいます。もう調べつくされているような気がしてしまい、わかっているもののような気がします。それ以上知ろうという気持ちにはなりません。

そうではなく、
「ものをはげしく燃やすはたらきのある気体に、酸素という名前をつけた」と考えると、もっと自由になります。

その気体(酸素という名前をつけた)には、人類が知らないだけで、他にも性質があるかもしれません。今、わかっていることがすべてではない、まだわかっていないことがあると思うと、世界がひろがります。まだまだわからないことがあるこの世界って面白い、すばらしいと思えてきます。目の前の世界がひらけてきます。

研究者たちは、何かを調べる際「こうするとどうなるかな」と考えながら実験をします。その結果、何の反応もなく終わることもあります。反応があっても、その反応に気付かない場合もあります。なぜそんな反応が起こるのかわからない場合もあります。
膨大な実験結果の中の、分かったこと、確からしいこと、特徴のあるもの、そして今の年齢で理解できることだけを私たちは教わります。無数にある性質の中の、ごくごく一部です。しかし私たちはそれしか教わらないので、それがすべてであるように感じてしまいがちです。

「分かっていないこともある」「教わっていないこともある」「これは、結果の1つにすぎない」
それを頭に置いた上で、知識を得てほしいと思います。

今回の実験を通して、世界をとらえるひろがりが大きくなり、この世界ってすばらしい、その世界に生きている自分ってなんて愛おしい存在なんだと感じてくれたらうれしいです。それが、生きようという力になります。人生を自分らしく豊かに生きてほしいと願っております。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

三宅恵里香