全盲の弁護士

こんにちは。瀧口です。

新年度の準備の時期でございます。この間三宮教室に備品を運び込みました。なかなかいい教室になりそうでワクワクしています。

さて。

先日、大胡田 誠(おおこだ まこと)さんという弁護士の方のインタビューを聞きました。

この方は、全盲です。

目が、見えません。

 

かんたん(?)に紹介します。

大胡田さんは先天性緑内障で、生まれたころは見えていた目が小6のときに完全に見えなくなりました。

それまでは普通の小学校に通っていたのに、中学から盲学校へ。

言われなき、心なき差別を受け、何よりも自分はこれでいいのか? という絶望の中。

しかし同じく全盲の弁護士の方の書いた本を読んで衝撃を受け、弁護士を志しました。

 

弁護士になるためには、まず大学を出ないといけません。

でも、そもそも全盲の人を受け入れてくれる大学がほとんどありませんでした。国公立でも。

受験を拒否するんですね。

 

探して、探して、ようやく慶應義塾大学が受け入れてくれるということで受験して、補欠合格。運よく入学辞退者がいて、繰り上げ合格になりました。

 

合格早々、今度はアパート探しで苦労します。

目が見えない人が一人暮らしで住むと火事など何があるか分からないということで、入居を拒否され続け。

ようやく見つかったのは、学校から片道1時間半かかるアパート。(そこの家主さんは非常に良くしてくださったようです。)

 

司法試験は、ただでさえ莫大な量の試験問題を解く。それを点字で追いながら解くと言うのは時間が圧倒的に足りない。

司法試験に1回落ち、2回落ち、3回落ち、満を持して臨んだ4回目も落ち、目の前が真っ白になって、

もうどうしたら良いか分からなくなってしまって「ぼく、どうしたらいいかな」とご両親に正座して聞いたとき。

ずっと支えてくれた母親の言葉が「自分の心で感じてみて、あったかくなる方を選べばいいよ」。

その言葉どおりにした結果、やはり自分は弁護士になりたいと感じ、5回目を受け、合格。

 

弁護士になった後も、目が見えない先生に担当になってもらうのは不安ということで依頼者に断られたり。

 

でも、目が見えないということで言われなき差別を受けて来て。だからこそ、理解されない人の心の痛みが誰よりも分かる。

そして、どんな困難、どれほどの絶望的な状況であっても「大丈夫。なんとかなる。」と信じて進む強さが、依頼者に感動を与える。

大胡田さんは、今も第一線で活躍されておられます。

ご結婚もされ、お子さんもいらっしゃいます。

(私は知りませんでしたが、2014年の冬にテレビドラマの基にもなったようですね。)

 

さて、で。

私このインタビューを聞いたときにいろいろ感じたのですが、1つあるのが「人生を幸福に生きるのは、勉強ができるとかではなくて、自分を信じる心の強さこそが大切」ということです。

もう、目が見えないなんて「できない理由」の絶好の材料じゃないですか。

ただでさえ難しいであろう司法試験を受けるのに、いや、弁護士になりたいんだけど、俺、目、見えないしなー。

大学。受験拒否。じゃーしょーがないよね。

目が見えないほどの苦難がなくても、なんだかんだ理由をつけてサボることはできるじゃないですか。どれだけ優秀な頭脳をもった人でも。

 

乙武さんもそうですけど、今自分が持っている機能・能力を使って「ではどうしたら良いかな?」を考えて、乗り越える。

 

人間にできることって、きっとそれしかなくて。

 

もちろん自信過剰で、考え無しではダメですけど。

そういう意味では勉強ができることというか「自分の頭で考えられること」はとてもとても大切ですけど。

というか「自分の頭で考えることができる」人は、自然と勉強もできるような気はします。(必要と思わなかったらしないでしょうから学校の成績とは結びつかないかもしれませんが)

でもそれは、やっぱり「自分を信じられる心の強さ」より下の順位に来ます。

 

まずは、自分は、大丈夫。何とかなる。できない理由を考えてもしょうがない。できる方法を考えよう。

「自分はこれをしたい!」という情熱と「自分は何とかなる!」という自信があれば、きっと、どんなことでもできる。最強。

 

「自分はこれをしたい!」というものを見つけられるかどうかは、時の運にもよると思います。いろいろな体験をして、アンテナを広げるしかない。それは、行動するしかない。興味があるかどうかも分からないものでも、とりあえず首をつっこんでみる。ちがったら、やめる。凝ってみる。こだわってみる。

でも、結局自分に自信が無いと「これをする自分はいいのかな?」と弱気になってしまって、力を発揮できない。

授業中に答えが分かっていても「でも、ちがっていたらどうしよう?」と考えて発言できないあの状態と同じですね。

 

結局は「自分は自分で良い。失敗しても良い。大丈夫。」という自己肯定感が、すべてを支えています。

それを育てることこそが、何よりも、何よりも、大切。

 

ガリレオサイエンス教室では

・自己肯定感を高めること

・自分のことも他人のことも大切にしたふるまい(コミュニケート)できる人になること

・自分が望む状態に向けて、自ら考え行動できる人になること

を目指した活動をしています。それを通して、すべての人が人生を自分らしく豊かに生きる世界を作ります。

 

そんな想いを、新たにしました。

理科実験教室ですから、好奇心、知識、論理的思考力も大切だと思っています。勉強が大切でないとは思っていません。勉強も、大切です。ガンガン知識も提供します。でも、それだけではダメなんです。

「自分は、絶対に、大丈夫!」という根拠のない、でも確かな自信を心の底から実感できる人(ただの甘えたではなくて)。に、たくさんなってほしいなと思っています。

以上です。

ガリレオサイエンス教室 瀧口幹浩